本物のパンのライト「PAMPSHADE」アーティストインタビュー。「パンがもっと、好きになる。」をテーマに、パンの魅力を伝え続ける
本物のパンからできたインテリアライト、PAMPSHADE(パンプシェード)。
PAMPSHADEを考案したアーティスト森田優希子(もりた・ゆきこ)さんにお聞きした開発ストーリーや、作品への想い、森田さんが感じるパンの魅力についてご紹介していきます。

クリエイター 森田優希子(もりた・ゆきこ)さん
PAMPSHADE考案者のアーティスト
パン屋さんとの出会いと、アーティストとしての熱い心
「もっとパンの魅力を伝えたい、共感してほしい」。
その想いに行きつくまでには、かけがえのない出会いと、森田さんの熱いアーティスト魂がありました。
もともとパンが大好きで、美術大学の版画学科に通いながら大学近くのパン屋で働いていた森田さん。まさにPAMPSHADEの原点となったそのパン屋は、大量生産を追うのではなく、生地をつくり、こねて、発酵させ、焼き上げる工程をすべて手作業で行っているお店でした。
「本物のパンはこうやって出来るんだ」
パン粉から美しいパンが出来上がる工程のすべてを見ることができたことで、作り手や季節や天気など、様々な条件によって毎日違う表情を見せるパンの魅力に引き込まれていったそう。
一方、大学では自分が納得できる作品がずっと創れなかったという日々のなかで、ふと、この魅力的な「パン」を作品のテーマにしたらどうだろう、と思い立ちました。
「パンに毎日触れることが楽しく、自分の感情を最も揺さぶるものがパンだということに、この時気づきました」と振り返ります。
パンに差し込んだ光によって、PAMPSHADEを「みつけた」
そこからは試行錯誤の連続。
専攻していた版画にパンを入れてみたり、パンをモデルに見立てて風景の中で写真を撮影してみたり、わざとカビをはやして観察したり。
「パンってなんだろう?」
その想いを、森田さんなりにどんどん突き詰めていったそうです。
パンと対峙し、パンを見つめ続けていたある日、パンの柔らかい部分をくりぬいて眺めていた時、ふと窓の外の西日がパンに差し込んだ…。
光を宿したパンが、そのぬくもりを表しているような感覚。
あたたかく、やさしく、内側からの魅力があふれ出る様子は、まさに森田さんが感じていたパンの魅力を表現していたのです。
ずっとモヤモヤしていたものがすべて晴れたように、「これだ!」と直感した森田さん。パンをテーマにしようと決めてから、このときまでに1年が過ぎていました。
“パンのランプシェード”という存在を、やっと「みつけた」という感覚を得て、初代PAMPSHADEが生まれたそうです。
光を灯すことでそのぬくもりを感じられる
パンそのものの魅力を留めることへのこだわり
「もっとパンの魅力を伝えたい」という想いはさらに強まり、PAMPSHADEは作品の枠を超えて、2016年に正式に商品化。今では日本国内にとどまらず、世界中のファンに愛されています。
商品化を模索する中で森田さんが最もこだわったのは、「パンそのものの魅力を伝える」ということ。
「究極のパンの魅力はパン屋さんに訪れないと出会えないものなので、それをなるべく壊したくない。だから、風合い、テクスチャーやその存在感をできる限り留めたいんです」と語る森田さん。
パンそのものの姿や風合いを失わないよう工夫された作品たち
たとえば、電源スイッチ。
初代PAMPSHADEではスライド式だったスイッチを、最新版では”置くだけスイッチ”に変更。「パンの形をしたランプシェードの電源を入れる」というとても現実的な行為によって、PAMPSHADEのほっこりとした世界観が失われるのを防ぎたいと考えたためです。
パンらしい表情を留めるため、製造工程にも多くのこだわりが。
ツヤやかな部分とマットな部分を併せ持つPAMPSHADEの表面は、パンの中をくりぬいた後のコーティングに秘密が隠されているそう。
様々な手法をかけあわせて、順番を変えたり、塗り方を変えたり、試行錯誤を重ねた末に出来上がった今のリアルなパンの表情。
森田さんが最も苦労したという、秘密のポイントだそうですよ。
細部にまで宿る、森田さんのパン愛
PAMPSHADEは、パン屋さんで廃棄になった本物のパンを素材にしているためひとつひとつサイズや形が異なります。
そんな商品の形も世界観も崩さずにお客様へとお届けするためのパッケージも試行錯誤を重ねたそう。
「台紙に両面テープで貼り付けるだけだと、輸送中に剥がれて傷ついたり割れてしまったり。プチプチで包むと届いたときに中身が見えず、わくわく感が半減してしまう。”スポンジで包む”という今の方法にたどり着くまで、時間がかかりました」と振り返る森田さん。
また、パッケージの側面に印字されている「PAMPSHADE」のロゴ。実は、食パンの断面に焼き印をいれるように、ひとつひとつのパッケージに焼き印で押されているんです。
「ひとつひとつにムラがあって違うこともパンの特徴と一緒だなと思って、焼き印を採用しています」と、パンへの愛が止まらない森田さん。こんな細部にまで、パンの魅力が詰め込まれています。
難しいからこそ惹かれる、パンへの想いとこれから
最後に、改めてパンへの想いと、これからの展望についてお伺いしました。
「パンは食べておいしいのはもちろん、その豊かな香り、やさしい色合い、ころんとした可愛らしい形・・・見ているだけであたたかく、幸せな気持ちになります。そのくせパン生地はとっても繊細で、なかなか思い通りにできあがらない。
食品だけど、ひとつひとつ表情が異なり、生き物のように形を変えるのが不思議で、ずっと見ていたくなる。工業製品みたいに機械的じゃないからこそ、魅力的です。
今はパンのランプシェードをメインで作っていますが、それはまだパンの魅力を伝える方法の一部で、すべてではないと思っています。
これからも『耳をすませば聞こえるパンの声』を聞きながら、さらに多角的に、新しい作品や表現方法で、もっと奥深いパンの魅力を伝えていきたいですね。」
「パンがもっと、好きになる。」をテーマに、今後も色々な展開を考えておられる森田さん。
今後のPAMPSHADEも、目が離せません!